* 越後・秘境の山「矢筈岳」* 1,257,5m 「矢筈岳」は、新潟県五泉市の藪山で残雪期でなければ行けない山がある。 この矢筈岳は、春の残雪期でも雪渓を歩き、一日では行けない山であると 聞かされ、私が行ける山ではないと思っていた。 近くの山、高立山には小さい小屋があり、その小屋に冬から春にかけて 薪ストーブの暖を取りながら、団欒に山好きな人が近隣から集まって来る。 ![]() Dさんは、一人でも泊りで春「矢筈岳」に登ると話をされ、 「誰も居ない秘境の山はアルプスの風景より素晴らしい」と話していた。 何回目かの話の中に「私も連れて行ってもらえませんか」とお願いしたら 断らなかった。 Dさんは、力持ちで足が速い、遅れるだろうが、そう迷惑は掛けないで ついて行けると思っていた。 2006年5月の連休、残雪期二泊三日の山行き。 メンバーは隊長のD氏、隊員T氏と私共夫婦の4人である。
第1日目 晴 五剣谷岳に向けて 5月3日午前6時30分登山口悪場峠集合、林道の雪は消えていた。 ザックの重さは、約15キロ必要最小限度荷物は軽くした。 テントは、力持ちの隊長D氏が担いだ、荷物は30kg位あるのだろうか。 彼は春のぜんまいとりで60kg担いで降りて来る位だから、私等は怪物? と思っている人だ。 四人で登山開始、先が長いが隊長について行く、仏峠で最初の休憩。 ![]() 途中、水無平はカタクリの花が行ってらっしゃいとばかりに咲いていた。 ![]() 新緑の中に山桜が咲き正に春たけなわである。 ![]() 急登のジグザグを登りきると祠のある稜線に出た。 ここで小休止をする。 ![]() 小休止を終えて歩き出すと、雪渓歩きとなり隊長は 「今年は雪が多いなぁ、意外と歩きやすいぞ!」と呟いた。 ![]() しばらく歩くと木六山山頂に着く。山頂と付近は雪はないが、 一歩下がるとまだ雪が詰まっている。 山頂から隊長は、これから行く方向を指差し、山の説明をした。 ![]() 銀太郎を目指して歩き出す。周辺の雑木も芽吹始めた。 ![]() しばらく雪の上を歩いて七郎平の水場に着く、ここに3人の パーティーが先に来ていた。 彼等はピッケルを持っている。準備周到だなぁーと思った。 七郎平清水で20分ほど休憩をして歩き出す、この辺はブナ林だ。 ブナも新芽が芽吹き、残雪を踏みながら春の息吹を感じながら 七郎平を横切って歩く。 ![]() 銀次郎山を目指す。 よく銀次郎、銀太郎山と人は言っていたが、その位置さえ 分からなかったが、今その山の上に立つ事が出来る。 ![]() 山頂には5〜6人のパーティーが休んでいた。 結構他の人も矢筈岳を目指すんだなと思った。 連休で天気が良いからだろう。 銀次郎山から見渡す川内山塊は素晴らしい。 これが川内山塊だ! まだ雪の多くついた山々を見渡し、その景観を眺める。 ![]() 銀次郎山を少し下りると、小さい祠に男性のシンボルの神仏が 祭られていた。 凡そ30kgの石つくりの神仏を昨年隊長が担ぎ上げたという。 雪で傾いた祠を直してお参りをする。 ![]() 次のピーク銀太郎山を目指して歩き出す。 ![]() 銀太郎山の周辺には雪があるが山頂付近の尾根は 雪が無くここも一部夏道を歩くことが出来た。 ![]() 銀太郎山に到着する。ここも絶景!絶景! ここまでは道がついているがここから先は、夏道はないという。 次に登る山は五剣谷岳だ。隊長は、指をさしてあれが五剣谷岳だ と説明、かなり雪がついていて急な登りだ。 内心あんな急な登り、どこから登れるのかと思うほどに見えた。 「雪が硬くなければ良いが」と隊長は言う。 滑らなければ良いが、内心若干不安だった。 山頂で休憩、川内山塊も佳境に入る。なかなか来れない山だ。 景色は格別、水を飲み喉を潤しながら、絶景の川内山塊を見渡す。 ![]() 山頂を出発、歩き出すとまた残雪を踏んで前進だ。 「今年は雪が多いから楽だぞ」と隊長は叫んだ。 道がないので藪を分けなくても良いからだ。 ![]() 五剣谷岳目前、急登が始まる。 これが遠くから見えた急登かと思いながら隊長の後を歩く。 長い急登なので途中立ち休憩、振り返ると相当な傾斜だ。 すべっても何処かで止まるだろうと思うと怖さは和らいだ。 ![]() 歩き出し稜線に出る。「五剣谷だぞーと隊長が叫んだ」 これが五剣谷岳か、私等では来られない山頂に立つ! 感無量であった。 ![]() かなり頂上付近は広い、何処にテントを張るのも自由だ。 比較的平らな斜面にテントを張りベースキャンプにする。 五剣谷岳には、3人パーティーが2組、単独が二人いた。 私等入れて12人で結構沢山の人が、矢筈岳を目指している。 張ったテントからは、粟ヶ岳の裏側が真正面に見える。 ![]() 明日登る青里岳、矢筈岳も近くなってきた。 テントの中で一杯やりながら夕食とする。 日が暮れて休む前に、見上げると空には星が 落ちそうなほど無数に輝いていた。 ![]() 第2日目 晴 =矢筈岳を目指して 4日の朝を迎える。 五月晴れの快晴、粟ヶ岳が朝陽に輝いていた。 この光景は、再び観ることが出来ないかもしれない。 ![]() 朝食を取り、身支度をして午前7時出発。 残雪を踏み、藪を分けての歩きだ。 ![]() しかし、雪も多く朝の残雪を踏み歩く気分は最高だ。 ![]() 天気は良い!眺めも良い!気分最高!山歩き最高だ! ![]() 急坂をトラバースする。 成る程安全確保にピッケルはあっても良い場所だと思った。 隊長は、ピッケル、ストックは基本的に必要とせず急登は慣れている。 しかし、私共はそうはいかない。 この先どんな所があるのだろうか、不安を持ちながら足元を確認し、 2本のストックで安全確保をしながら慎重に前進する。 ![]() 青里岳に到着。既に二人が山頂にいた。 一人はここまでにするという。 もう一人は、私等の後に付いて矢筈岳を目指した。 ![]() 山頂から藪越えで下降、そして雪渓。 川内山塊の真っ只中を歩いている。 ![]() 時々振り返り、周辺を眺めながら歩く、一面雪原だ。 ![]() クレパスを避け、歩き易いルートを歩く。 隊長の藪や雪渓のルート取りは動物的な感を持った人だ。 ![]() 青里岳をバックに記念写真を撮る。 ![]() 又急斜面だ、しかも雪が硬い、登りだから慎重にカッティングを して登るが、帰りはこの硬い雪状であると危険と思った。 (幸い、帰りは雪が柔らかになり、スムースに降りる事が出来た) 急坂を終えて腰を下ろして休憩をした。 後から3人のパーティーが登って来たら隊長は「歩こう」と立ち上がり 歩き始めた。越されたくないようなので私等も後に続いた。 あと頂上は30分位か、どんどん隊長は進む、山頂手前は藪を分けて 前進だが早い早い、私等より10分くらい早く山頂に着き待っていた。 今まで私等をかばって歩いていたが、これが隊長のペースで 人間並みとは思えない 。 9時55分、憧れの矢筈岳に到着。約4時間で頂上に着いた。 ![]() 山頂は、標識が立っていた。一人一人記念写真を撮る。 憧れ「秘境の矢筈岳」その山頂に立つ事が出来た。 何とも言えない満足感でいっぱいだ! ![]() 帰りは、ゆったりと周辺の山々を眺め味わいながら 雪渓を歩きベースキャンプへ引き返す。 ![]() 第3日目、 晴 ベーキャンプを撤収し下山 5日も晴!朝テントを撤収して下山開始。 ![]() ベースキャンプを撤収して帰路に・・・ ![]() 銀次郎山で休憩。 ゆっくりと歩いて来たルートや山々、川内山塊を眺めながら休憩をする。 ![]() 登る時硬い蕾だった石楠花が温かさで開きかけていた。 ![]() 水無平のカタクリも満開。 私らの帰りを待っていてくれるようであった。 ![]() 3日間快晴に恵まれ、憧れの川内山塊、「秘境の山・矢筈岳」 縦走登山を無事終える事が出来た。 |